yuibachanのブログ

100歳まで心は乙女を目指すばあさんの日記

ぼくの帽子  西条八十  「トミノの地獄」





母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?




12月26日撮影『帽子』





帽子を見ていたらふと思い出した美しい詩。映画、「人間の証明」でキャッチコピーとされた帽子が消えて行った詩は西条八十の『ぼくの帽子』。この詩に惹かれ、小説も読み映画も見に行きましたが、覚えているのは美しい詩だけ...




ぼくの帽子 西条八十




母さん、僕のあの帽子、どうしたんでせうね?
ええ、夏、碓氷から霧積へゆくみちで、
谷底へ落としたあの麦わら帽子ですよ。
母さん、あれは好きな帽子でしたよ、
僕はあのときずいぶんくやしかった、
だけど、いきなり風が吹いてきたもんだから。
母さん、あのとき、向こうから若い薬売りが来ましたっけね、
紺の脚絆に手甲をした。
そして拾はうとして、ずいぶん骨折ってくれましたっけね。
けれど、とうとう駄目だった、
なにしろ深い谷で、それに草が
背たけぐらい伸びていたんですもの。
母さん、ほんとにあの帽子どうなったでせう?
そのとき傍らに咲いていた車百合の花は
もうとうに枯れちゃったでせうね、そして、
秋には、灰色の霧があの丘をこめ、
あの帽子の下で毎晩きりぎりすが啼いたかも知れませんよ。
母さん、そして、きっと今頃は、今夜あたりは、
あの谷間に、静かに雪がつもっているでせう、
昔、つやつや光った、あの伊太利麦の帽子と、
その裏に僕が書いた
Y.S という頭文字を
埋めるように、静かに、寂しく。





子供にとってお母さんとはどれだけ大きな存在でしょうねぇ。下の画像のかわいい坊やもどれだけお母さんを慕い甘えていることか?
坊やが大人になったころ、そんなことはみんな忘れてしまい、ふと何かの拍子に優しかった母を思い出すのでしょう。風がサッと吹いてくるように、時々…




かわいらしい坊や




霧積高原の宿で、ひとりの青年が、西条八十のこの詩を宿の弁当の包み紙に見つけ、母への懐かしさに立ちすくんだといいます。青年とは森村誠一、のちにこのエピソードを元に書いた小説がベストセラー「人間の証明」。何が作品のきっかけになるか、分からないものですね。




人間の証明の八端となったのは「金湯館」のおにぎり弁当だそうです。

画像はお借りしました。




秘境にたたずむ一軒宿、霧積温泉の金湯館。訪れてみたいですね。

画像はお借りしました。





ところで、西条八十さんの詩に「トミノの地獄」という、朗読すると呪われて死ぬと言われている詩があるのをご存知ですか?


調べて見ると、こんな詩でした。↓ 読むだけなら呪われないと思いますが、念のため、朗読しないでくださいね。



❝❞❝❞❝❞❝❞❝❞❝❞❝❞❝❞❝❞❝❞



姉は血を吐く、妹(いもと)は火吐く、
可愛いトミノは宝玉(たま)を吐く。
ひとり地獄に落ちゆくトミノ、地獄くらやみ花も無き。
鞭(むち)で叩くはトミノの姉か、鞭の朱総(しゅぶさ)が気にかかる。
叩けや叩きやれ叩かずとても、無間(むげん)地獄はひとつみち。
暗い地獄へ案内(あない)をたのむ、金の羊に、鶯に。
皮の嚢(ふくろ)にやいくらほど入れよ、
無間地獄の旅支度。
春が来て候(そろ)林に谿(たに)に、暗い地獄谷七曲り。
籠にや鶯、車にや羊、可愛いトミノの眼にや涙。
啼けよ、鶯、林の雨に、妹恋しと声かぎり。
啼けば反響(こだま)が地獄にひびき、狐牡丹の花がさく。
地獄七山七谿めぐる、可愛いトミノのひとり旅。
地獄ござらばもて来てたもれ、針の御山(おやま)の留針(とめばり)を。
赤い留針だてにはささぬ、可愛いトミノのめじるしに。 




実はこの詩の解釈ははっきりしていないようです。
トミノが男性か女性かすらもわからない。
有名な解釈としては
「戦争に無理やり連れていかれる事を表現している。」
「虐待を受けており、虐待を地獄と表現している。」
「死と転生を表現している。」
のではないかといわれているようです。


戦争と虐待、嫌ですね。この世から消えてほしいです。🙏🏻






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